MADE · ステップ1 · MAP
組織を
マップにする
「アジャイル」やフレームワークの用語を使わず、シンプルな言語と1枚のマップで、組織が実際にどう動いているかを見ます。今どこにいるかがわからなければ、次にどこへ向かうかも決められません。
マップ
2つのマンデートで、1枚のマップ
個人でもチームでもAIエージェントでも、すべてのユニットは、与えられた2つのマンデートで配置します。肩書きは関係ありません。マッピングは必ずひとつのビジネスアウトカムを軸にします。マンデートが広いか狭いか、完結しているか不完全かは、誰かが届けるべきアウトカムに照らして初めて決まるからです。
仕事を担うのはインテリジェンスの担い手、つまり人、グループ、AIといった組織ユニットです。人でもエージェントでもロボットでも、同じマンデートのマップが当てはまります。肩書きではなく、何を学び、何に取り組んでよいかで配置します。
ひとつのアウトカムから始める
まず、プロダクト、顧客の課題、バリューストリームといったビジネスアウトカムと、それに取り組む人を挙げます。そのうえで各ユニットのマンデートを、アウトカムに照らして判断します。あるアウトカムには完結しているチームが、別のアウトカムには不完全なこともあります。
スキル範囲のマンデート
ユニットが使ってよいと認められている、スキルの範囲です。右に行くほど、他に頼らず素早く届けられます。区切り線より左のユニットは不完全で、顧客価値を届けるには他の力が要ります。右は完結しています。
仕事範囲のマンデート
ユニットが担う仕事の大きさです。タスクやケイパビリティ(アウトプット)から、部分的・全体的なソリューション(アウトカム)まであります。アウトプットが増えても、アウトカムが増えるとは限りません。
4つの象限
2本の区切り線がマップを4つの象限に分けます。Directing、Driving、Doing、Deliveringの4つのインテリジェンスです。
マンデートが形づくる4つのインテリジェンス
組織が何を察知し、何を決め、何を実行できるか。それは人やツールの中にあるのではなく、各ユニットに与えられたマンデートから生まれます。マンデートが狭ければインテリジェンスは縛られ、広く一貫していれば広がります。マップ上の位置が表すのは組織としての力であって、人の価値ではありません。
DIRECTING
調整のインテリジェンス
集中管理で解決策の全体を見渡す。価値を直接つくるスキルはないが、計画と統制で他者の仕事を調整し、価値を加える。
例 · 要件を書くビジネスアナリスト。
AIとともに · 統制しているという錯覚に陥りかねない。リーダーを実際の仕事に近づけるなら話は別。
DRIVING
適応のインテリジェンス
アウトカムを自分たちのものとし、次に何をつくるかを方向づけることに集中する。発見とデリバリーを併せ持ち、顧客からの生の手がかりで、課題と解決策の両方を磨く。
例 · 3人のスタートアップ、またはチーム・オブ・チームズ。
AIとともに · 新しい領域での認知的負荷を和らげる、増幅装置。
DOING
専門特化のインテリジェンス
狭い領域で高度なスキルを持つ。はっきり区切られた範囲の中で、精度、品質、効率に優れる。アウトカムではなく決まったタスクに集中する、深い専門家。
例 · レシピどおりに完璧に仕上げるラインコック。
AIとともに · タスクを自動化する。ただ、タスクが速くなっても部分的なアウトプットが増えるだけ。
DELIVERING
フローのインテリジェンス
決まった仕事の範囲で、自分たちだけで価値をつくる。完了の定義を最後までこなし、範囲を守りながら素早く成果を届ける。
例 · ECサイトの検索チーム。
AIとともに · 先生役となって、より広いシステムを学ぶコストを下げる。
書籍より · 10X ORG、原則3:マンデートで知性をかたちづくる
人に「言語が得意」「論理が得意」「音楽が得意」といった違いがあるように、組織にもさまざまな得意、つまりインテリジェンスがあります。それは、組織ユニットに与えられた、構造化されたマンデートを通じて表れます。
組織の知性は固定された特性ではなく、個人の中にあるものでもありません。システムそのもの、とりわけ、誰が決め、動き、学び、成果を形づくってよいかを定めるマンデートから生まれます。マンデートが狭ければ、知性は制約されます。マンデートが広く、一貫していれば、知性は広がります。
問うべきは、どのインテリジェンスが「優れているか」ではありません。今の戦略課題をどの組み合わせが最もよく支えるか、そして戦略の変化に合わせてその組み合わせをどう進化させるかです。……組織はひとつのインテリジェンスに縛られません。おろそかにしてきたものを意図的に育て、組み合わせて、パフォーマンスを支えられます。
詳細マッピング · 4×4
16のアーキタイプ、ひとつの言葉
2×2は4つのインテリジェンスを示します。組織のユニットを細かくマッピングするには、4×4版を使います。各軸に4段階、あわせて16のアーキタイプ。ユニットの組み立て方と動き方の典型パターンに、それぞれ短い名前がついています。
名前の読み方
接頭辞は仕事のマンデートの行(TASKS、CAPS、PART、WHOLE)、数字はスキルのマンデートの列を、左から数えて表します。たとえば CAPS-3 は「ケイパビリティ単位のエンドツーエンド」。Deliveringのグループに入る、アウトプット志向の完結ユニットです。
スキル範囲のマンデート →
- 機能別: ひとつの機能領域の専門家。例: 映画の衣装部門。
- 複数スキル: クロスファンクショナルだが、まだ未完結。例: 術後ケアに頼る外科チーム。
- エンドツーエンド: 完全な価値を届けるのに必要なものがそろっている。例: ソフトウェアのフィーチャーチーム。
- 拡張型: エンドツーエンドで、必要なら新しいスキルを身につけるマンデートも持つ。例: 特殊部隊のチーム。
仕事範囲のマンデート ↑
- タスク: ひとつの専門性に合った、細かなタスク。例: 食材を仕込むスーシェフ。
- ケイパビリティ: ひとまとまりの能力(機能、働き、サービスの一部)。例: 保険金請求の処理グループ。
- 部分的な解決策: 事業の縦割りのひとつ。例: Uber Ride と Uber Eats の違い。
- 解決策の全体: 全体としての課題と顧客価値を扱い、ユニット内に恒久的な分断がない。例: Instagram のような2人のスタートアップ。
エコシステムのマッピング
マッピングの利点
簡単な表記と数文で、エコシステム全体を描けます。全体として捉え、課題に気づき、改善の対話を始められます。チームごとにやるのではありません。チーム単位の改善は、なかなか定着しないからです。エコシステムのユニットは互いに依存しているため、ひとつのシステムとして一緒に改善する必要があります。
Mapping Language
エコシステム1 · 現状
ほとんどのチームは CAPS-2 です。複数のスキルを持つものの、いくつかのケイパビリティが足りず、未完結です。機能別の TASKS-1 の専門家がそれを支えるため、依存関係が生まれ、CAPS-1 と PART-1 のグループがそれを管理しています。
エコシステム2 · 改善後
専門家がチームに加わり、ほとんどのチームが CAPS-3 になります。ケイパビリティ全体を届けるのに必要なスキルがすべてそろった、エンドツーエンドのチームです。1つのチームは CAPS-4 へ育ち、仕事が求めるときに新しいスキルを学びます。依存関係がぐっと減るので、調整役の CAPS-1 グループは要りません。方向づけは PART-1 グループが引き続き担います。これらをあわせて、デリバリー・トポロジーです。
2×2か、4×4か
まずは2×2から話します。アーキタイプの名前を持ち出すのは、論点が本当にくっきりするとき、または相手から聞かれたときです。
マッピングの進め方 · GO SEE
マップを手に、見に行く
トポロジーは、机の上では評価できません。マッピングと、仕事が実際に行われる場所であるGemba(現場)は、互いを高め合います。判断を挟まず、好奇心を持って、みんなでマップにします。
STEP GOAL · FROM 10X ORG
私たちの組織のどの部分が価値の創出に貢献していて、アイデアから現金化まで、それらはどう連携して価値を生んでいるか。
CORE VALUE · 好奇心
アウトカム
どのビジネスアウトカムをマップにするのか。それに取り組むのは誰か。
仕事の種類
そのアウトカムに向けて、ユニットは何を引き受けているか。
インプット
何を、どこから受け取って成り立っているか。
アウトプット
何を、誰のために生み出しているか。
フロー
アイデアから現金化まで、仕事はどう流れているか。
Go See がマップを育てる
組織図だけでは、ユニットを配置できません。仕事そのものを見ます。何が入り、何が出ていくのか、誰が誰を待っているのか。見たままを、肩書きや階層ではなく仕事の実態として描きます。
マップが次の歩みを導く
描き上げたマップは、次に見る場所を教えてくれます。依存の線が集中する箇所、不完全なユニット間の受け渡し、必要なトポロジーとのギャップです。
みんなで使う成果物
マップは、みんなで見直し、問い直し、改善できます。だから、リーダーと現場の人が、いちばん大切な発見を一緒に自分のものにできます。
書籍より · 10X ORG「マップを手に Go See」
こうしたマップは、Gemba(現場)に足を運ぶことの代わりにはなりません。マッピングと Go See は互いを強めます。……マッピングすると、価値創造の地形が見えてきます。時間が止まった静的な組織図ではなく、生きた構造として現れ、改善がとくに必要な場所がはっきりします。
マッピング事例
2021年、Alexey Krivitsky はウクライナ拠点の SaaS 企業 Poster の組織設計の見直しを支援しました。R&Dは、コンポーネントごとに分かれた12の専門チームから、プロダクト全体を担う6つの多能型チームへと再編されました。
Before:Doing
チーム単位のマネージャーを置いたコンポーネントチーム。それぞれが自分の作業リストを持ち、依存関係でつながっていました。
After:Driving
共通のプロダクトバックログを持つ、ひとつのチーム・オブ・チームズ。周りにプロダクトオーナー、プロダクトマネージャー、エンジニアリングマネージャーがいます。
「完了」とは、使われること
チームは機能の定着まで責任を持ちました。選んだ顧客が実際に使い始めて、初めて機能は完了です。
設計そのものがしなやか
COVID-19、そしてその後の全面侵攻に見舞われたとき、Poster は圧力の中で設計し直す必要がありませんでした。
コミュニティから
実在の組織を、関わった人たちがマップにしました。各マップには、読み解くための背景と、ケーススタディ全文へのリンクが付いています。
DIM.RIA:戦時下での適応
Resource topology: Head of Product, PMs and team leads in Directing; analytics, design and eight web, Android, iOS and QA teams in Doing; work flows down from the PMs. DIM.RIA は、ウクライナを代表する不動産マーケットプレイスのひとつです。2022年に全面侵攻が市場を直撃すると、完全リモートで、LeSS の原則に沿って組織構造を設計し直しました。マップが示すのは出発点です。プロダクトマネージャーが多数の小さなチームに仕事を割り振るリソース・トポロジー(Directing+Doing)でした。アダプティブな組織へどう近づいたかは、ケーススタディで語られています。
Flo Health:領域ごとのサイロから、戦略的オーナーシップへ
A General manager joins the product manager, analyst, designer and UX researcher in Whole-1 (dotted ring); the same value creation, value capture, platform and support teams sit in Part-3, Caps-3 and Tasks-3. ヨーロッパ初のフェムテック・ユニコーン Flo Health には、モバイル、AI、コンテンツ、医療、事業の各領域にまたがる20以上のクロスファンクショナルなプロダクトチームがあります。領域チームを解体する代わりに、オーバーレイとして General Manager の層を加えました。こうして施策ごとにオーナーがひとり決まり、領域チームは専門性を保っています。
Eurecat FPED:研究ユニットのアジリティ
4x4 map with both states (AK 2026-10-05): initial state in black (four people in PART-1, four pools of people in CAPS-2); current state in blue (one person in WHOLE-1, four teams in PART-3, one pool of people in TASKS-1). FPED は、カタルーニャ技術センター Eurecat の研究ユニットで、プラスチックと複合材料の新しい製造プロセスを開発しています。R&Dラインの責任者たちは、細部まで管理する立場から、プロダクトオーナーに近い役割へと移り、チームに多くを任せるようになりました。マップは両方の状態を示します。最初の状態が黒、現在の状態が青です。
Paradigm:ビジネスとITを結びつける
Business owner hands to the central solution team in Part-2, which feeds a circled partial-solution team around the Part-3 / Caps-3 boundary; PO? and Ops? sticky notes mark open questions. ヨーロッパ有数のテクノロジー企業の計画領域にあるアジャイル・リリース・トレイン(ART)で、トレインはビジネスケイパビリティごとに組まれています。次世代の計画ソリューション Paradigm が、設計を見直すきっかけになりました。マップが示すのは最適な設計で、PART-3 に位置するチーム・オブ・チームズです。
きっかけは、ある夕食の席
Future state: Stacy in Part-1 hands work to a single team of teams in Part-3, which feeds the implementation unit in Tasks-2. 行政機関のプロダクトマネージャーが、3人のプロダクトオーナーと4つのチームを率いています。書類上はアジャイルですが、実際はそれぞれが自分のバックログで動いていて、あるチームが詰まっても他は見ているだけです。マップが示す将来の設計では、チームがプロダクト領域全体に沿って並び、プロダクトの構築、検証、運用までを一貫して担います。
de Volksbank:運用チームと並び立つ開発チーム
4×4 map of de Volksbank in 2023: four dev teams at CAPS-2 (customer onboarding, new business lending ×2, maintenance) still paired with operations at TASKS-1, the bloxx team at CAPS-3, the vendor team at CAPS-1 and ten IT dev teams at TASKS-1. de Volksbank のビジネスバンキングは、開発者がタスクをこなす形から、担当する運用チームと組んだフィーチャーチームへ移りました。2023年までに、4つの開発チームの大半は CAPS-2、つまり顧客ジャーニーに取り組む不完全なチームになり、ひとつは CAPS-3、つまりエンドツーエンドで働く段階に達しました。マップはその現実を示しており、ベンダーとITは今もチームの周囲にいます。
フレームワークのマッピング
自社のフレームワークをマップにする
マッピングを始める
無料ツールと、マッピングのヒント
Miro テンプレート
チームとオンラインでマッピングを始められる、基本のマップと空のマップです。
フレームワークのマッピング
「SAFeをやっています」では、設計はほとんど伝わりません。SAFe、LeSS、Team Topologies などをマップの上で見ます。
代表的なトポロジーを学ぶ
3つのトポロジー、3つのゴール
代表的なトポロジーは、それぞれ専門性、フロー、調整、適応といった異なるインテリジェンスを組み合わせていて、力を発揮できる環境も違います。
アカデミー
Org Topologies™ のアプローチを学ぶ
今後のイベント一覧





